塙宣之「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」感想。M-1って少年漫画みたいだ。

塙宣之「言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」感想。

Youtubeでお笑い芸人を観ることにハマってる。最近気になる芸人はたくろうとコーテイとトンツカタン森本。おまけの夜とかお笑いを語るYoutubeチャンネルも好きだ。芸人の追っかけやるファンの気持ちも分かる。それくらいこの世界って奥が深い。

年一回日本一の漫才を決めるコンテストM-1。いったらお笑いのオリンピック。このM-1という大会のパッケージ・歴史・評価軸の分析を通じて、笑わせるってなんなのか、何故笑ってしまうのか、何故あのコンビは爆笑をかっさらえて、あのコンビは優勝できないのか、についてナイツの塙が解説してくれるのがこの本。

すごく面白かったし、エモかった。ウェットですらある。思えばこういう本って今までなかった。

テレビやYouTubeであれだけ見てるのに、全然わからない世界のことが少し分かる、M-1と漫才の解体新書。

M-1って少年漫画みたいだ。

第一期(2001~2010)と第二期(2015~)に分かれているもののもう20年弱の歴史があるM-1(第一回の時松っちゃんは38歳だって。やば)は、振り返ってみると本当にたくさんのスターが生まれてるんだなぁと思う。

塙が次々と歴代ファイナリスト達を紹介していくんだけど、その語り口がうまいのでワクワクする。皆んなそれぞれの武器、人間性、漫才のタイプも全く違ってキャラが濃い、まるで少年漫画の登場人物みたいだと思う。

なんか少年ジャンプのバトル漫画で、以前苦戦した敵キャラに、主人公が新しい能力とか工夫を使って勝つみたいな展開、あるじゃん。

ナイツ塙はそれを観客席から解説する脇役キャラって感じで、ハンターハンターの天空闘技場でゴンがギドやリールベルトとバトルした時にそれを解説するキルア、みたいな。この本ではその主人公がどんどん入れ替わるんだけど、どの漫才師に対しても愛が溢れてる。

この本では歴代ファイナリスト達がどうやってそれまでの固定概念を覆し、プロの審査員達に評価されたのか解説するのに大きく文字数を割いている。

例えばこんな感じ(厳密に引用ではないけど)。

  • M-1原点にして、ナニワのしゃべくり漫才の日本代表 中川家
  • 史上初の”100m走9秒台”を叩き出した ブラックマヨネーズ
  • 漫才界のエルビス・プレスリー 笑い飯
  • 非関西弁唯一の”160キロピッチャー” アンタッチャブル
  • ツッコミの概念をひっくり返した 南海キャンディーズ
  • 史上最大の革命児 スリムクラブ
  • 天然のしゃべりモンスター ミキ

それぞれだけ読むと意味わからないかもだけど、塙の説明を読むとよく納得できる。彼らがどれだけ凄いことを成し遂げたか。個人的にはハライチに触れてくれていたのも嬉しかった。

しかもスポーツと違うのが、新陳代謝が異常に激しいということ。一年ごとに新しいスタイルが現れて、前年のファイナリストでも翌年順位を大きく下げるというのが頻繁に起こる。

4分間に人生を詰め込む、M-1というパッケージ

色々な漫才師について読んで思うのが、改めて、5年10年ひとつのことやり続けるって本当にすげーということ。僕も社会人を7年やってるけど、認められるかどうかもわからないことを、しかも他の同年代が社会人として給料や地位を上げていく中で、モチベーションを維持してただひたすらにネタを作り続けるって、並大抵な精神力では決してできない。

しかも漫才となると同じ熱量をもった相方と出会わなきゃいけない。

それってもう奇跡じゃん。

その奇跡の集大成が年一回観られると思うと、本当にM-1というパッケージはえげつないと思うんだよな。

漫才における発明は生涯にできても一つか二つらしい。クリエイティブを生み出せずに消えていく漫才師もごまんといるんだろう。それらの屍の上に立って、マイク一本で舞台に立つ彼らがカッコ悪いわけないよな。

毎年恒例の審査員を審査する問題

当たり前だけど、審査員も人間だし、例えば体操やフィギュアスケートと違って評価項目や点数配分がルールとして決まっているわけではないので、ある漫才に対して審査員で評価が大きく分かれるということが起こる。ここがスポーツと違うところで、審査員の個性が色濃く反映されてる。

この本では主に松本人志を例にとって、何故他の審査員と採点が異なるのか説明してくれる。

同時に、僕の好きなジャルジャルとかハライチが何度も決勝に出場しているのに優勝できない理由の解説も頷けるものがあった。そしてそれは霜降り明星が2018のチャンピオンに輝いた理由と裏表になってる。

無理やり言葉にするなら人間味ということになるんだろうけど、そういった要素が絡んでくるので審査が割れるのは当たり前なんだよね。

今年のM-1も楽しみです。

この本の最初と最後は霜降り明星に触れて終わるんだけど、それが希望を感じさせて味わい深い。M-1がれっきとした競技漫才というのはみんなわかっていることだけど、それを評価するパッケージ含めてまだまだ発展途上なんだなと感じた。

と、ここまでほとんど著者のナイツ・塙のこと書いてなかった。正直M-1の印象はないけど、THE・MANZAIで披露したのりピーのネタはいまだに覚えている。激烈に笑った。爆笑問題二人も手叩いて爆笑してたし。あれは確実に伝説になる。

あとM-1チャンピオンに絶対的な憧れがありながら、結局優勝を果たしていないナイツ塙が書くからここまでグッとくるんだと思う。

海外からはリアルタイムで観られないけど、歴代最高の参加者数となった2019大会も楽しみにしている。

僕はたくろうに期待しています。

Written by Ryo Konishi