Voigtländer(フォクトレンダー) 40mm f/1.2 NOKTON(ノクトン)を買ったので、そのファースト・インプレッション。 SONY Eマウントのレンズでは三本目の購入。

焦点距離は、自分的に広角でも標準でもないと思っている 40mm。単焦点だし、オートフォーカスは無し、しかも10万円超えという、令和にしては少々クセのあるスペックに心惹かれた。

実際にノクトンで写真を撮ってみると、驚くくらい万能なレンズで、人も景色も物撮りも、撮りたいものはだいたい撮れる。ただし動く物は少々苦手。

ちなみにこの記事でNOKTON 40mm f/1.2の作例として載せる写真は、RAW撮影でAdobe Lightroomのカラープロファイルで現像しています。

とびきり明るい単焦点が欲しかった。

SONY α7 IIでは長らくTAMRON 28-75mm f/2.8を常用レンズとして使っていて非常に気に入っていた。

そこそこ明るく、最短撮影距離も短くて接写もできる。ボケはキレイだし、重量も抑えられてる。EISAアワード受賞をはじめ世界的に絶賛されているのも頷ける完成度の万能大三元レンズだと思う。

でもずっとズームレンズを使っていると、いつしかもっとボケを効かした写真が撮りたくなる。気がついたら、F値1台のレンズを物色し始めていた。

あとなんかこう、オールドファッションな装いで写真撮るのに憧れもあった。コンパクトな撮影機材で街を歩いてサッと写すみたいな。山でのウルトラライトな考え方に近い。

マニュアルフォーカスであることにこだわりはなかったんだけど、当時SONYのEマウントで、コンパクトな標準域の焦点距離で、オートフォーカスで、と絞っていくと、納得のいく写りをするレンズがなかったというのもある。

例えば今のNikkor Z 50 f/1.8みたいな価格、コンパクトさ、写りのバランスのレンズってソニーに(現時点では)ないよね。Sonnar 55mm f/1.8の評価は高いけど、ボケ方が個人的に好きになれなかったし、最短撮影距離が少し遠すぎると思った。

で、ずっと欲しかったのがこのNOKTON 40mm。

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Instagramのハッシュタグで投稿されてる写真がどれもいい感じだったので、昨年フォクトレンダーの12mmを手に入れた頃より以前から実は40mmは気になっていた。

あと40mmという焦点距離を一度持ってみたかったってのがあって。50mmは常用と考えるとは僕には若干窮屈だし、Fuji X 100Tを使ってた頃は逆に35mmは広すぎると感じていた。宮崎あおいが昔、たしかNikon FM3Aで40mm使ってるという記事をどこかで読んで感銘を受けたのも覚えてる。

あと決定打がChad Wadsworth氏のWEBサイト

どの写真もジャスピンで締まりがある一方、フィルムライクな粒子感も残っていて、昨今のデジタル的なクリアーな画像とは少し違う質感がいいなと思った。ページの下の方に行けば各写真のExif情報などもみられるので興味ある方はぜひ。

ベルリンの中古カメラ屋で突然の遭遇

とはいえ、新品をドイツで買おうとすると1,098€=約13万円、WEBでポチるにはもうひと押し欲しいなと思っていたある日、ベルリンの中古カメラ屋巡り中になんと発見してしまった。

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価格は849€。新品からそんなに値が下がってない。そんな金銭的余裕あるのか自分。冷静になるべきだ。ただ次の瞬間には店内に飛びこんで試さずにはいられなかった。

二十枚くらい試し撮りし、一応次の日まで考えてみて、それでも結局買うことにした。

早速撮ってみた。

まずは開放F値の1.2縛りで。

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言われていた通り、ピント面がうっすい。そして開放なのでピント面も若干フワフワしている気がする。

息遣いによる体の前後のブレで簡単にピントずれる。最短撮影距離付近では至難の技。

僕にとって初めてのF1.2のレンズなので、ピント面からすごい勢いでボケていくのが楽しくて仕方ない。Bokeh Masterの異名を取るだけのことはある。

4 ~ 5m離れててもピント合わせは依然としてシビア。

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逆に言えば、自分から被写体が少し離れていて背景を取り入れつつ分離する、みたいなことがしやすいレンズともいえる。例えば焦点距離35mmでF値が2以上のレンズだと、同じ条件でそこまで背景がボケてくれないんだよね。

また、距離エンコーダー内蔵で電子接点がついていてボディ側の5軸手ブレ補正が効かせられるため、かなり暗い場所でも手持ちで撮影がいける。

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で、マニュアルフォーカスなわけだけど、フォーカスリングの動作はすごいスムーズ。当たり前だけど、オートフォーカスのTAMRONと比べるとフォーカシングがしやすい。そうでなくちゃ困るのだけど。

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リングの回転量のうちo.6mまでで約半分なので、マクロ側はピント合わせしやすくなっている一方、開放f値だと中遠景にコツが要り、α7 IIのピーキングサインが出ていてもピンが合っていないということが起こる。

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またマクロ側で撮影していていきなり遠景にピントを合わせる、というのはけっこう大変。フォーカスリングをかなりの量回す必要があるので、次に撮りたい画、収めたい被写体を先読みすることが大事。

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あと、絞りダイアルがレンズにあるのはやっぱりいい。TAMRONにはないからね。

α7 IIの親指付近とレリーズボタン先にそれぞれ絞り変更ダイアルがあるのだけど、もちろん電子式なので、コンマ数秒タイムラグがある気がするのがものすごくストレス。咄嗟にどっちに回せばいいか感覚的にわからんというのもある。f値くらいはメカニカルに変えたい派。

ただ、レンズ側の絞りダイアルはもう少し固くてもよかったかな。F1.2で撮っていたはずなのに、いつのまにか1.4になっていたというのが結構な頻度である。

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F1.2 ~ 2.0までの間で、印字されてないがf/1.6、1.7といった段階的な撮影ができる。カメラ詳しい人には当たり前のことなんかな。

開放の癖。フリンジエグい。周辺減光あり。だがしかしそれがいい。

店内での試し撮り。同じフォクトレンダーの50mmと比べて最短撮影距離が0.35mと短いのもいいところ。ただし最短距離付近かつ条件次第でフリンジが存在感を主張してくる。

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中心部の「TAMRON」のロゴのフチに注目。グリーンとパープルのフリンジが目立つ。

そして開放付近では周辺減光がしっかりある。これもレンズの味なので、Lightroomなどで補正すると逆に魅力が薄れてしまう不思議。

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この辺り、人によってマイナスになる特性は、F2.0以降ではかなり解消されてくる印象。

解像度について、開放F値かつ最短距離撮影では確かに甘めなのは否めないけど、少し離れたり、F値を上げればみるみるクリアになっていく。

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これ↑はf/1.6で撮影

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こちら↑はf/3.2

コンパクトなサイズと軽さ

マニュアルフォーカスとはいえ、冷静に考えれば f/1.2のEマウントレンズでここまで小さい のって結構頑張っていると思う。

SONY Eマウントの標準域で写りの良い大口径レンズ、例えば50mmだとSigma ART f/1.4やZeiss 50mm f/1.4があるけど、やっぱ毎日つけて歩くにはでかすぎる。

対してこちらは実測438g(レンズ本体、レンズキャップ、フード込み)。軽くてコンパクト。その割にレンズフード含めて金属製なので安心感ある。

そしてSony αシリーズへの収まりがいい。個人的にはズミクロンやフォクトレンダー 50mm f/1.5のような小さくて細いレンズが好きだけど、これはこれでよし。

レンズにカメラ本体(SONY α7 II)と電池、メモリーカード含めると 1,040gなので、片手でカメラ持って歩き回ってもノーストレス。

マニュアルフォーカスでは写真の撮り方が変わってくる

マニュアルフォーカスなので、撮り方というか身体の動かし方が変わってくる。

何か見つけたら、そこまで歩きながらもしくは体勢を整えながらピントリングを合わせる感じ。

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そしてかなり寄れる。最短撮影距離35cmというのは優秀な数字で、「え、ここまで寄れるの」というくらい近づける。

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体感的には焦点距離35 ~ 50mmをカバーしてくれる(自分でも何言ってるかわからない)ため、寄ったり引いたりして調整できる40mmは色々撮りたい人に絶妙な距離なんだろなと思う。あんまり「これ撮れないわ」って状況がない。

さらに夜もいける。レンズの名前に「夜」(NOKT-)が入っているだけあって、光の取り入れ方でいろんな写り方になる。

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ただ、わかっていたことだけど、動くものには弱い。というか自分の腕次第。マニュアルフォーカスで何でも撮っていた昔のカメラマンには頭あがらない。特に開放してるときが滅法弱い。開放F値のピント面の薄さが尋常じゃないので。

水槽の魚なんか僕のスキルじゃ無理っす。

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もっと慣れてくるとリングを回す感覚でファインダーを覗かなくても合わせられるようになるのだろうか。自分に期待だ。

現像してみた感想。

撮影時のExif情報が後から見られるのってやっぱりむっちゃ助かる。オールドレンズをアダプターでつけているとこうはいかない。

絞り開放で四隅の光量が落ちる件については、むしろ補正しないほうがいいと感じてる。。特有の暖色の表現と相まって生み出される舞台の中で照明をあてているような雰囲気が薄れてしまう。

またTAMRON28-75mmで撮影した写真については、VSCOから以前販売されていたフィルムプリセットの中でKodak Portraを当てていたのだけど、どうもこちらのレンズには馴染まないと感じた。もともとがこってりした色合いだから、現像の方向性は結構絞られると思う。レンズプリセットを当てて補正すると多少癖が抜ける感じがするけど、それだとつまらないしね。

あと前ボケを入れて遠景を撮ると絵になるんだよなー。アンニュイというかミステリアスというか。

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↑ちゃんと奥の街にピントがあっているとわかるのもいい

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解像感がこれより上のレンズはいくらでもあると思うけど、ランドスケープでも立体感が保てるというのは個人的にけっこう大事。

そして暖色、特にオレンジ系の色の表現が際立っている。自分でも気づかなかった画面内の光を拾ってアクセントにしてくれる。

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あとはアンダー気味が似合う。ハイキーな写真で透明感狙うより、シャドーをギリギリに持ち上げるのがいい。これでモノクロを追求するのも面白いかも。

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あとは僕の腕前不足でけっこう手ブレが多かったな。SONYのボディ側手ぶれ補正と大口径に任せて自分自身の技術をおろそかにしてしまった。

レンズ特性を知る上でphillipreeve.netというサイトも参考になった。

これによるとフリンジなどはF2.0でほぼ解消するとのこと。

実はNOKTON 50mm f/1.2と迷った

同じくSONY Eマウントのフォクトレンダー標準域では、NOKTON 50mm f/1.2が存在する。同じF値、同じNOKTONシリーズの兄弟機。

50mmの方が新しいし、最後まで迷ったが、InstagramやFlickerを見る感じ、非常に些細な差だが、ボケがやや硬くてうるさい気がした。あと1万円くらい高い。40mmが売れなかったからなのか。

フォクトレンダーのVMマウントでよければ選択肢はもっと増える。40mmだけでもクラシックシリーズ含めて3種類くらいあるし。オールドレンズのような見た目が好みだったけど、ただでさえマニュアルフォーカスの敷居が高いので、電子接点による恩恵が欲しくて多少金額が高くてもEマウントにした。

建物も撮りたい自分には50mm一本で旅に出かける勇気はないが、40mmなら一本持って出かけられそう。そういう企画でもやろうかしら。

フォクトレンダーからは12月にAPO-LANTHAR(アポランター) 50mm f/2.0が出る。こちらはNOKTONとは別系統で、より高画質なシリーズ。しかも値段もあんまり変わらない。すでに発売されている同シリーズの65mmの作例を見る限り、もっと寒色がすっきりと出て解像感もある画づくりで、NOKTONとは異なるテイスト。次はこれでも買ってみようかしら。

最後に

インプレッションという割に長くなってしまった。

NOKTON 40mm f/1.2はSONY α7 IIを買った時から欲しかったレンズ。

金額とスペックのバランス的に手が出し辛いという人も多いと思うけど、フォクトレンダーのようなユニークで高品質なレンズを作るメーカーはユーザー人口も増えてほしいので、このブログでは今後もフォクトレンダー普及活動をしていきたい。(もっと売れて安くなってほしい)。

とりあえず、今はf/1.2で遊ぶのが楽しいです。